torabo-tsuki LP(XS)レビュー | ハードとソフトが噛み合った名作。ただし狭ピッチは人を選ぶ

4.5

仕事道具としてのキーボードを探す旅を、もう何年も続けています。どのキーボードも素敵なんですが、自分の手指とこだわりにフィットするかどうかとなると話は別で、次々に「これはどうだろう?」が出てきてしまう。

旅のなかで、いちばん手指にしっくりきていたのがKeyball 39の配列でした。列ごとに段差をつけたカラムスタッガード、親指が自然に届く位置、小指の伸ばし方。ここがぼくの基準線になっています。

ただ、その配列をそのまま仕事道具として持ち歩けるかというと、話が変わります。出社日の鞄に入れるなら厚みが効いてくるし、会議中に接続や充電で気を揉むのも困る。keyball 39の配列を、仕事道具として成立する薄さと携行性で手に入れられないか。これがずっと解きたかった課題でした。

cool642tb、roBa、LiNEA40と乗り換えてくるあいだ、どの機体も条件がひとつずつ足りませんでした。最後に残ったのがtorabo-tsuki LP(XS)です。ただしXSのキーピッチは17mm。それまで19mmピッチしか触ってこなかったので、狭ピッチの実験機も兼ねるつもりで組みました。

2026年2月から約7ヶ月、仕事でほぼ毎日叩いた結果、当たりと外れははっきり分かれています。配列も薄さも電池のもちもラグのなさも当たり。外れたのは17mmひとつだけ。そして当たり外れの外側に、キーキャップの入手性という別の高さがありました。

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求めていたのは「Keyball 39の配列を、無線で、鞄に入る薄さで」

torabo-tsuki LP(XS) レビュー 完成した左右分割キーボードを真上から 右手側に19mm球の白いPOMトラックボール
旅の終着点。右手側の白い球が19mm球のPOMトラックボール

このシリーズに手を出した理由は、17mmキーピッチではありません。Keyball 39の配列を、ロープロファイルの薄さと無線で手に入れる。狙いはその1点だけでした。17mmが乗ってきたのは、そのあとの話です。

Keyball 39を基準に、条件がひとつずつ足りなかった

基準はKeyball 39です。物理的なキー配置まで含めて、ぼくの手指にはこれが最もしっくりきていました。ここを起点に「無線がいい」「もっと薄く」と条件を足しながら、機体を渡り歩くことになります。

最初に試したのがcool642tbでした。作りも値段も乾電池駆動も素敵な機体です。ただ、トラックボール部分の高さと、キーが格子状に並ぶオーソリニア配列が気になりました。

次がroBaです。キットではなく個別に部品を買い集めて組む野良ビルドで、Keyball 39に近い配列はgood。そのかわり全体的に分厚く、鞄に入れるたびに「もう少しコンパクトにならないか」という引っかかりが残りました。

そこへLiNEA40の先行販売が始まって、飛びつきました。MX互換軸の世界で生きてきたぼくには到達し得なかった薄さで、Choc V2というロープロファイルスイッチにすっかり魅了されます。ただ、こちらもオーソリニア。慣れで使えるようにはなったものの、シンデレラフィットではありませんでした。

3台を通って、欲しい条件の束がはっきりします。Keyball 39の配列、ロープロファイル、薄いこと、無線であること。この4つを同時に満たす機体は、ぼくが探した範囲ではtorabo-tsuki LP(XS)しかありませんでした

LPシリーズのなかでXSを選んだのは、実験と巡り合わせ

シリーズを選んだ理由と、そのなかでXSを選んだ理由は別です。前者は条件の束、後者は半分が好奇心で、半分がタイミングでした。

torabo-tsukiという無線トラボ付きの左右分割キーボードがあることはずっと前から知っていて、配列も好みどおり。それでも手を出さなかったのは、親指で叩くサムクラスターがChocスイッチ固定だったからです。

ところがLiNEA40を組んだ時点で、その理由が消えていました。嫌っていたはずのChocのほうが、いつのまにか自分の標準になっていたからです。

しばらくして、torabo-tsukiにロープロファイル版のLPシリーズが登場しました。条件の束を満たす機体がついに現れたので、迷う余地がありません。

LPにはS・M・L・XSのサイズがあり、キーピッチが17mmなのはXSだけです。買いたいと思ったときに在庫が補充されていたのがXSでした。そこで19mmピッチのSを待つ手もあったのですが、17mmの狭ピッチがどんなものか試してみたい気持ちもあったので、そのまま購入ボタンを押しています。半分は実験、半分は巡り合わせでした。

トラックボール径のほうは自分で選べます。25mm球と19mm球から、過去に使い込んだ25mm球ではなく19mm球に挑戦しました。外したときに詰むのも嫌だったので、トラックボールケースだけは19mm球用と25mm球用の両方を3Dプリントしています。

裏を返すと、ロープロファイルにまだ移っていない人にとって、この機体はそもそも候補に入りません。見送っていた頃のぼくがまさにそれでした。

当たり1|Keyball 39の配列が、LiNEA40と同じ薄さで収まった

torabo-tsuki LP(XS) レビュー LiNEA40との薄さ比較 トラックボールを積んでも並べた高さがほぼ同じ
白い球が見えているほうがtorabo-tsuki LP(XS)。トラボを積んでいるのに、並べた高さがほぼ同じ

組み上げて机に置いた瞬間、探していたものが全部揃ったのが分かりました。大きさも薄さもLiNEA40と並び、そこにKeyball 39の配列と19mm球のトラックボールが載っています。

薄さのほうは、設計の手が2箇所で効いていました。

トラックボール基板が斜めに刺さる

torabo-tsuki LP(XS) レビュー トラックボール基板の角度 球の奥で読み取り基板が斜めに刺さっている
球の奥で基板が斜めに刺さっている。垂直でも水平でもない

球を外して中をのぞいたとき、読み取り基板が斜めに刺さっているのに気づきました。他のキーボードだと、だいたい垂直に立てるか水平に寝かせるかの2択です。

torabo-tsuki LP(XS)は、トラックボールケースそのものに基板の差し込み口を作ることで角度をキープしています。部品を足さずケースの形だけで角度を出す手つきに、舌を巻きました。

キーキャップとトラボが噛み合って薄くなる

torabo-tsuki LP(XS) レビュー キーキャップとトラックボールの噛み合い キーキャップ側がボールの丸みに合わせて逃げている
キーキャップ側がボールの丸みに合わせて逃げている

19mm球のトラックボールを使うとき、キーキャップとボールがお互いに合わせた形になり、めちゃくちゃ薄くコンパクトに収まります。これがもうひとつの工夫でした。販売ページでも写真で推されている部分なので、作者がいちばん工夫したのはここなのだと思います。

torabo-tsuki LP(XS) レビュー デスクに置いた高さ 厚みの主役はトラックボールではなく電池ケース
球を積んでこの高さ。厚みの主役はトラボではなく電池ケース

球を積むと厚くなる、という当たり前がこの機体では成立しません。斜めの基板も、この薄さを出すための手段なのだと思います。

トラックボールを載せると分厚くなるから、と敬遠してきた人なら、この2箇所だけでも見る価値があります。

当たり2|単4形電池1本で、充電の予定が生活から消えた

torabo-tsuki LP(XS) レビュー BMP Boostと単4形eneloop 基板1枚で昇圧からBLE通信まで担う
この基板1枚で、電池1本から昇圧してBLE通信まで回している

7ヶ月のあいだに電池を替えた回数を思い出そうとして、うまく数えられませんでした。単4形1本で数ヶ月動くので、交換が生活のイベントとして記憶に残らないんです。

以前はそうではありませんでした。Xiao BLEとLiPoバッテリーの組み合わせだと2週間から3週間で充電が必要になり、その予定が常に頭の片隅にありました。同じ操作性のまま、充電の予定そのものが生活から消えています。手元に入れているのは、充電式のeneloopが1本だけ。

これを支えているのがBMP Boostという基板です。乾電池だけで稼働させることを前提に昇圧回路を組み込んだもので、公称では電池1本0.7V以上から動きます。キーボード制御もBLE通信も、この1枚が担当します。

作者はtorabo-tsukiと同じsekigonさん。つまりキーボードの設計者が、それを電池1本で動かすための基板まで自分で作っています。機体と電源が同じ頭の中でつながっているので、省電力の詰め方にも納得がいきました。

同じ体験、同じ操作性、同じ滑らかさで、どうやってここまで持っていったのか。ハードとソフトを横断したチューニングの賜物だと思います。Apple製品やHHKBと同じレベルのこだわりで、値段が高くなるのも納得です。

充電の頻度を理由に無線の分割キーボードを諦めた経験があるなら、ここが効きます。

当たり3|Web会議中にトラックボールのポインタが飛ばない

出社日の会議中、Bluetoothヘッドセットをつないだままトラックボールでポインタを動かす。Xiao BLEベースの機体ではこの場面でポインタがカクついていましたが、torabo-tsuki LP(XS)では7ヶ月で一度も再現していません

USBオーディオトランスミッターを挟んで逃げた話と、Windows側のゴーストデバイスを消しにいった話。原因を追いかけた記事を2本も書くくらい、繰り返し再現して困っていた症状です。会議中にポインタが飛ばないというだけで、仕事道具としての信頼度が変わります。Web会議の時間が長い人ほど、ここは効きます。

差はたぶんファームウェアのチューニングだと思いますが、そこは確かめていないので断定しません。

ついでに書いておくと、ネット上ではtorabo-tsuki LP系のネジ穴の薄さや無線の不安定さを指摘する声も見かけていました。ぼくの個体は7ヶ月毎日持ち運んで、いまのところ全く問題なしです。

球そのものにもお金がかかりませんでした。トラックボールを支える部分がベアリング方式なので、ボール表面の潤滑性をそこまで強く意識しなくて済みます。だからトラックボール向けにコーティングされた専用品ではなく、ただのPOM球でも十分滑らかに動きました。AliExpressで送料込み2個500円。汚しても数百円で替えが利くので、運用の気楽さが違います。

唯一の外れ|17mmキーピッチには7ヶ月経っても慣れない

torabo-tsuki LP(XS) レビュー LiNEA40との大きさ比較 17mmピッチと19mmピッチのキー配置の差
上が17mmピッチのtorabo-tsuki LP(XS)、下が19mmピッチのLiNEA40。1キーあたり2mmの差が積み上がる

ここまでが当たりです。配列も薄さも電池もラグのなさも狙いどおりに返ってきて、外れたのは17mmのキーピッチひとつだけでした。

小ささは間違いなく魅力です。ただ、7ヶ月経ったいまも指がせせこましい。慣れで消えた不満は、ひとつもありませんでした

高速で打つと指と指がこすれる

せせこましさの正体は、高速で打鍵したときに指と指の間がこすれる感覚です。ゆっくり打っているぶんには気になりません。速度を上げた瞬間に出てきます。

いちばんこすれるのが小指と薬指、次に薬指と中指。人差し指はわりと自由に動かせます。キー配置的に自然とそうなる、という感じです。

タイプミスは増えない。増えるのは手の緊張

こすれると書くと誤爆が増えそうですが、タイプミスは特に増えませんでした。17mmだから打ち間違える、という話ではありません。あくまで打ち心地の違いです。

代わりに増えるのが手の緊張でした。7ヶ月使って残っている不満は、指先を常に閉じていなければいけない感覚、この一点に絞られます。手を開いて休ませる余地が17mmには無いんです。

時たま19mmピッチの機体と行き来しているのですが、19mmピッチを使うとちょうどよさを感じます。「狭ピッチに慣れたら19mmピッチに戻れなくなるのでは」という心配は、少なくともぼくには杞憂でした。

配列の慣れとピッチの慣れは別物

同じ人間が、カラムスタッガードの配列には3日で慣れ、17mmのキーピッチには7ヶ月経っても慣れきっていません。配列の慣れとピッチの慣れは、まったくの別物でした

配列のほうは、練習方法を記事にできるくらいはっきりと期限を切って乗り越えられました。指をどこへ運ぶかという行き先の学習なので、繰り返せば体が覚えます。

ピッチはそうなりませんでした。指と指の間隔そのものの話で、覚えるべき行き先が無いからです。狭ピッチを検討している人は、この2つを同じ「慣れ」として見積もらないほうがいいと思います。

当たり外れの外にあったコスト|ビルド・キーキャップ・総額33,000円

当たりと外れの線引きはここまでです。ただ、評価軸に載らないところで払ったものが3つありました。ビルドの手間、キーキャップの調達、そして総額です。

ビルドで手が止まったのは、電池ケースの足だけ

torabo-tsuki LP(XS) レビュー 左右のBMP Boostと単4形電池 電池ケースと本体をつなぐ金属の足
電池ケースと本体をつなぐ金属の足。薄く収めたくて何回か折り直した

組み立ては拍子抜けするほど簡単でした。手が止まった工程は1つだけで、それも苦労というより自分のこだわりです。

電池ケースと本体をつなぐ金属部分を、なるべく薄く収めたい。そう考えて折り角度を調整しては差し込み、浮きが出ては抜いて折り直す、というのを何回か繰り返しました。ここ以外に詰まった工程はありません。

LiNEA40のビルドガイドには0.1mm単位の指示が普通に登場して、センサーのレンズ周りでは0.5mm以内に収めろと言われます。あれと比べると、こちらは驚くほど素直でした。組み立て工程の写真をほとんど残していないのも、紹介すべき難所が出てこなかったせいです。

ファームウェアも同じでした。ZMKなのでcool642tbのキーマップがほぼコピペで載り、オートマウスレイヤーを含めて新たに詰まったことはありません。むしろ楽をしています。

キーキャップは既製品がほぼない

torabo-tsuki LP(XS) レビュー キーキャップを外した片側 Choc V2スイッチが並ぶ17mmピッチのキー配置
17mmピッチ用は3Dプリント品が基本。この1つ1つに載せる既製品がほとんど無い

ビルドで手が止まらなかったぶん、時間を取られたのはこちらでした。17mmピッチのキーキャップは既製品がほぼなく、入手性が低いうえにコストも高くつきます

17mmピッチのキーキャップは、基本的に3Dプリント品になります。ところが遊舎工房には1種類しか扱いがありません。そこで気に入らなければ、メルカリで個人販売している人か、JLCPCBのような代理3Dプリントが頼みの綱になります。

JLCPCBで発注すれば安く上がるかもしれない、とは考えました。しかしキーキャップは設計ファイルを公開しているケースが少なく、そこで断念しています。ケースは自分で発注できたのに、キーキャップだけ同じ手が使えませんでした。

結局メルカリで3,000円。2万円のキットに対して、樹脂の小片だけで3,000円が乗る計算です。キットを買う前に、キーキャップの当てがあるかを先に確認しておくことをおすすめします。

総額33,000円。HHKBを新品で買うのと同じ

揃えきった総額は33,000円ほど、HHKBを新品で買うのと同じくらいの額でした。キット本体はsekigonさんのBOOTHから直接購入して2万円ほどで、残りはここに乗せるものの代金です。

  • BMP Boost 2枚 別売り。送料を含めて1万円ほど
  • 3Dプリント品 トラックボールケースと電池ケースをJLCPCBで発注。クーポンと送料込みで2,000円ほど
  • キーキャップ メルカリで売られていた3Dプリント品を3,000円
  • トラックボール AliExpressで19mm球のPOMボールを2個500円
  • キースイッチ 購入済みのChoc V2を流用したので追加費用なし

キット代だけで予算を組むと、倍近くまで膨らむ計算です。自作キーボードは安く上がるものだと思って飛び込むと、ここで一度立ち止まることになるはずです。

3Dプリントの素材はJLC Black Resinを選びました。JLCPCBは素材で値段が変わるのですが、これは安めで丈夫そうで、しかも色が好みでした。

torabo-tsuki LP(XS)を含む3台を、どう使い分けているか

torabo-tsuki LP(XS) レビュー ボトムケースの裏面 四隅に貼ったハネナイトHNT003
四隅の黒い四角がハネナイトHNT003。底面同士を重ねて鞄に放り込む運び方に合わせている

17mmに慣れきっていないと書いておきながら、出社日の鞄にはほぼこの機体が入っています。在宅は19mmピッチの機体、出社はtorabo-tsuki LP(XS)、プライベートの持ち出しはLiNEA40。この3分割で7ヶ月が過ぎました。

実験機として組んだので、どれも手放さずに残してあります。自分でも理由がよく分かっていない定着の仕方なのですが、3台を並べてみると読めなくもない。

場面携行の要否マウス操作選んでいる機体
在宅の仕事不要長い19mmピッチの機体
出社日の仕事必要長いtorabo-tsuki LP(XS)
プライベート必要短いLiNEA40

在宅は持ち運ばないので、薄さのために17mmを引き受ける理由がなさそうです。手元に19mmピッチの機体が揃っているなら、わざわざ狭いほうを選ばない。ここだけは、わりと素直に読めます。

残る2つは、どちらも持ち出す場面です。差はマウス操作の長さのように見えます。仕事はポインタを動かしている時間が長く、LiNEA40の14mm球トラックボールで一日中動かし続けると親指が少し疲れます。19mm球のtorabo-tsuki LP(XS)なら、そこが持つ。プライベートはマウス操作が短いのでLiNEA40で足りる、という読み方はできます。

ただ、14mm球で疲れるのが慣れ不足なのかチューニング不足なのかも、まだ分かっていません。ぼく自身の感覚としてはノーロジックとしか言いようがなく、LiNEA40も大好きだから使う機会を作りたいだけ、という愛着の成分も混ざっていると思います。並べたら説明がついた、という以上のことは言えません。機体を何台も抱えている人ほど、この説明のつかない偏りには心当たりがあるはずです。

持ち出しが前提なので、ゴム足もそこに合わせてあります。ボトムケースの四隅に貼っているのはハネナイトHNT003で、LiNEA40に使ったものと同じ制振ゴムです。左右の底面を向かい合わせて重ねて鞄に入れるので、足はここに落ち着きました。

torabo-tsuki LP(XS) レビュー 出社日の持ち運び一式 ダイソーのiPad miniケースに重ねた本体とスペアの単4形電池とスマホスタンド
出社日の鞄に入るのはこの一式。電池は切れたとき用の予備で、スタンドはPCを開くまでもない場面用

運ぶ入れものも使い回しています。cool642tbのときに見つけたダイソーのiPad miniケースで、roBa用に買い増したものと同じです。機体が変わっても入れものだけは変わらないまま、3台目の相棒になりました。

17mmに慣れきらないまま、それでも出社日に選び続けている。この7ヶ月の行動そのものが、ぼくの評価です。

実際に使ってわかったメリット・デメリット

torabo-tsuki LP(XS) レビュー 左右を重ねた厚み ダイソーのiPad miniケースに載せた状態
重ねるとこの厚み。この姿のまま鞄に放り込んでいる

7ヶ月ぶんの評価は、メリット5つとデメリット3つに落ち着きました。

メリット

  • 単4形1本で数ヶ月もつ無線 Xiao BLE+LiPoでは2週間から3週間ごとに来ていた充電の予定が、丸ごと消えた
  • トラックボールが会議中でも引っかからない Xiao BLE機で悩まされたマイクとの干渉が、7ヶ月で一度も再現していない
  • 19mm球を積んでこの薄さ キーキャップとボールが噛み合う設計で、トラックボール内蔵ぶんの厚みが増えない
  • ビルドが素直 電池ケースの金属の足以外に手が止まる工程なし。0.1mm単位の指示も出てこない
  • キーマップはほぼコピペ ZMKなのでcool642tbの資産がそのまま載った。オートマウスレイヤーを含め、新たに詰まったことはなし

デメリット

  • キーキャップは既製品がほぼない 17mmピッチ用は3Dプリント品が基本で、遊舎工房には1種類しかない。純正1種類で満足できる人には無縁の話だが、選びたいならメルカリの個人販売が頼み。JLCPCBの代理発注は設計ファイルが公開されていないので当てにしないほうがいい。ぼくは3,000円で買った
  • 17mmキーピッチは慣れで消えない 高速で打つと指と指がこすれる。出るのは小指と薬指、次に薬指と中指を速く動かしたときで、ゆっくり打つぶんには無縁。速度を上げない打ち方の人なら、そもそも表に出てこない。どうしても気になるなら19mmピッチのtorabo-tsuki LP(S)を選ぶ手がある
  • キット代だけでは終わらない総額33,000円 BMP Boost 2枚で1万円、3Dプリント2,000円、キーキャップ3,000円、トラックボール500円が別にかかる。Choc V2スイッチと球を手持ちで賄える人は上振れしない。回避策は無いので、HHKB新品と同じ額と割り切って予算を組むのが早い

torabo-tsuki LP(XS)はこんな人におすすめ

向いているのはこんな人です。

  • 充電の予定を消したい人 単4形1本で数ヶ月。LiPoの2週間から3週間サイクルから解放される
  • 会議中にポインタが飛ぶ症状に心当たりがある人 Xiao BLE機で出ていた干渉が、この機体では出ない
  • ロープロ分割のビルドで挫折した経験がある人 難所は電池ケースの金属の足だけ

逆に、次のような人は無理に狙わなくていいと思います。

  • キーキャップを選びたい人 遊舎工房に1種類。あとはメルカリ頼み
  • 速く打つ人 17mmでは小指と薬指がこすれる。7ヶ月では消えない
  • キット代だけで予算を組む人 総額33,000円。周辺部品が本体価格に迫る

よくある質問

Q
torabo-tsuki LP(XS)の無線接続は不安定になりませんか。
A

ネット上ではtorabo-tsuki LP系について、ネジ穴の薄さや無線の不安定さを指摘する声も見かけます。ですが、ぼくの個体は7ヶ月間ほぼ毎日持ち運んで使った範囲で、無線の切断やネジ穴の不具合は一度も起きていません。会議中にBluetoothヘッドセットを併用してもトラックボールのポインタが飛ぶ症状は出ておらず、差はおそらくファームウェアのチューニングだと考えていますが、そこまでは確かめていないので断定はしません。

Q
トラックボールは19mm球と25mm球のどちらを選ぶべきですか。
A

torabo-tsuki LP(XS)は、トラックボールの球を19mm球と25mm球から選べる設計です。ぼくは過去に25mm球を使い込んでいたので、今回は19mm球を選びました。どちらを選んでも対応できるように、トラックボールケースは19mm球用と25mm球用の両方を3Dプリントしています。なお、この球のサイズはキーピッチ(17mm)とは別の数値です。

Q
torabo-tsuki LP(XS)のキーピッチは何mmですか。19mmピッチの機体もありますか。
A

torabo-tsuki LP(XS)のキーピッチは17mmです。LPシリーズにはS・M・L・XSのサイズがあり、17mmピッチなのはXSだけです。ぼくは17mmピッチを7ヶ月使った結果、ピッチの慣れだけが解消されなかったため、次の実験として19mmピッチのtorabo-tsuki LP(S)を注文しています。19mmピッチの機体で同じ配列・同じ薄さがどう感じられるかは、今後の別記事で確かめる予定です。

Q
torabo-tsuki LP(XS)のキーキャップはどこで手に入りますか。
A

17mmピッチ用のキーキャップは基本的に3Dプリント品で、遊舎工房の取り扱いは1種類だけです。気に入らなければメルカリで個人販売している人を探すか、JLCPCBのような代理3Dプリントに発注する手がありますが、キーキャップは設計ファイルを公開しているケースが少なく、ぼくはJLCPCBでの発注を断念しました。結局メルカリで3,000円のものを購入しています。2万円のキットに対して樹脂の小片だけで3,000円が乗る計算なので、買う前にキーキャップの当てがあるかを確認しておくことをおすすめします。

Q
ZMKのキーマップ移行は大変でしたか。
A

大変ではありませんでした。torabo-tsuki LP(XS)はZMKを採用しているので、以前から使っていたcool642tbのキーマップがほぼコピペで載りました。オートマウスレイヤーを含めて、新たに詰まったことはありません。ビルドで手が止まったのは電池ケースの金属の足だけで、ファームウェア面はむしろ楽になったという実感です。

まとめ:外れた変数はひとつだけ。だから次はピッチだけ動かす

総合評価:

torabo-tsuki LP(XS) レビュー デスクの上で猫が寝ている 7ヶ月この机の上にある
7ヶ月、この机の上にずっとある

★4.5の理由は2点です。17mmキーピッチが7ヶ月経っても慣れきらないこと、そしてキーキャップの調達に選択肢がほぼ無いこと。どちらも設計の失敗ではなく、この機体を選ぶときに引き受ける条件だと思っています。

裏を返せば、減点はその2つだけでした。Keyball 39の配列、LiNEA40と並ぶ薄さ、単4形1本で数ヶ月動く無線、会議中に飛ばないトラックボール。仕事道具として成立する薄さと携行性で配列を手に入れる、という最初の課題には答えが出ています。

言えることの限界も書いておきます。試したのは19mm球のトラックボールだけで、25mm球用のケースは3Dプリントまでしたのに一度も使っていません。どこかで載せ替えて試してみたいとは思っています。17mmピッチ由来の違和感が無い状態でこの設計がどう感じられるのかも、まだ確かめられていないままです。

だから次の実験を用意しました。当たりと外れが分かったので、外れた変数だけを動かします。執筆時点で、19mmピッチのtorabo-tsuki LP(S)を注文済みです。17mmに慣れきらなかったぼくが、同じ作者の次の機体をもう買っている。その行動が、この7ヶ月の答えだと思っています。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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