LiNEA40レビュー | 極薄直方体。キーボード小型化の終着点

客先への移動が多い仕事をしているので、持ち運ぶ道具は少なく・小さくというのが長年のこだわりです。キーボードも例外ではなく、小さく・薄く・でも入力性能は落とさない、という無茶な要求を満たすものを探し続けてきました。

その追求の末に行き着いたのが、LiNEA40です。ビルドしてから1ヶ月、毎日の仕事に持ち出して使い込んだ結果を正直に書きます。

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LiNEA40とは

製作者:kay(LiNEA.keyFreaks)さんによる自作キーボードキット

左右分割・ワイヤレス・1Uトラボ一体型・ロープロファイルというスペックが全部入りで、しかも極限まで薄さを追求した設計が特徴です。

注目ポイント

  • 左右分割+ZMKベースのワイヤレス
  • 右手側に14mmの1Uトラックボールを内蔵
  • 左手側にロータリーエンコーダー(制作者オリジナルの薄型ノブ付き)
  • ロープロファイル(Kailh Choc V2互換)設計で、分割キーボード界屈指の薄さ

需要が高く争奪戦になりやすい製品です。販売形態はときによって変わるので、最新状況はBOOTHをチェックしてください。

購入までの経緯

ぼくのキーボード選択の軸は一貫しています。同じ機能・操作性なら、より小さく薄いものが正義。客先への移動を含め仕事する場所が定まらない仕事柄、鞄の中身は最小化したい。かつ、文字入力の「抵抗」を限りなくゼロに近づけたい。

その考えのもと、キー数は80→60→40→32と削ぎ落とし、トラックボールのボール径も34mm→25mmへと小型化を重ねてきました。

そこできわめてミニマルなLiNEA40が公開されたわけです。初回公開時から目をつけてはいたのですが、当時はroBaや他の候補と迷っていたこと、既存の25mmトラボを活かしたかったこと、MX互換派だったこと、争奪戦に参加できる時間的余裕がなかったことなど、複数の理由で見送っていました。

しかし、cool642tbのロープロ化でロープロファイルへの移行ハードルを乗り越えたことで、LiNEA40を買わない理由が減ったのです。そこへ、受注生産・予約販売のアナウンスの追撃。見た瞬間、秒で申し込みました。

組み立て:難易度は高め。でも完成品の美しさで報われる

梱包と同梱物:個人開発とは思えないレベル

箱を開けて最初に思ったのが、「これ本当に個人開発?」という驚きです。

部品をきっちり固定・格納するための冶具が3Dプリントで同梱されており、梱包全体がメール便サイズに収まるよう設計されています。物流コストまで計算し尽くされたIKEA的な商品設計に、買う前から製作者の気概が伝わってきます。

ビルド工程:0.1mm単位のこだわりが随所に

本体設計の随所に「薄さのための工夫」が施されています。

  • ボトムケース内側にホットスワップソケットをめり込ませるための穴が掘ってある(ソケットの出っ張りを逃がすため)
  • スペーサーの規格長さに縛られないよう、鬼目ナット的な部品を3DPケースに熱で圧入する設計

miniaxeを1mm薄くするために物理改造したり、ただでさえ薄いcool642tbを更に薄くカスタマイズ(物理)してきた身としては、こういうの大好物です。

とはいえ、このこだわりはそのままビルド難易度の高さに直結します。ビルドガイドに普通に0.1mm単位の指示が普通に登場するのです。

  • 鬼目ナットの熱圧入は派手に失敗するとケースが使い物にならなくなるリスクあり
  • ホットスワップソケットのハンダが少しでも跳ねているとボトムケースと干渉してケースが閉まらなくなる
  • Xiao BLEのハンダがこんもりするとトップケースが浮いてしまう
  • トラボセンサーのレンズを固定する際、プラ脚を溶かして残した部分を0.5mm以内に収めないといけないセンサーが浮いてトラボ読み取りに支障が出る

よって、相応のビルド技術と根気が必要です。それを制作者さんもわかっているのか、ビルドガイドはGitHubではなくnoteに書くというユーザフレンドリーなスタイルで、丁寧な解説をしていただいていました。

しかし・・・

しっかりビルドできたときの完成品の美しさは格別です。惚れ惚れするくらい薄い。大きさもiPhone 16と張ります。

で、すごく薄いんですね。先日組み立てた野良のroBaの半分くらい。

操作性:各パーツを実際に使い込んで感じたこと

ソフトウェア面(ZMKキーマップ)は個人的に仕上がったものがあるので割愛し、ハードウェア面に絞って書きます。

ロータリーエンコーダー:左親指の仕事が増えた

左手側に搭載された制作者オリジナルのロータリーエンコーダーが、思いのほか便利でした。通常のロータリーエンコーダーとの違いは「ノブが薄型」かつ「側面に適度なギザギザが刻まれている」点で、親指の側面が自然に引っかかる設計になっています。親指の関節の動きと連動してスムーズに回せます。

使い道として特に重宝しているのが上下スクロールです。右手トラボのスクロールレイヤは「上下のつもりが左右が混じる」という誤作動が稀に起きますが、左手エンコーダーを使えば物理的に上下方向しか発生しません。CtrlキーとセットでのスクロールによるWebページ拡大縮小操作が特に快適です。

加えて、右親指への負担を分散できるという点も地味に重要です。トラボでポインタ操作とスクロールを両方まかなうと親指が疲れてきますが、スクロールを左親指にオフロードすることで負担が分散されます。

14mmトラックボール:実用性はある。快適性は25mmには及ばない

正直、14mmトラボの操作性は25mmには負けます。

親指の「腹」ではなく「側面」でボールを動かすことになるため、脳内での操作イメージとカーソルの動きが同期するまでに時間がかかります。大きなポインタ移動と1px単位の細かい操作を同一のCPI設定でこなすのも、25mmより難しい。

とはいえ、「慣れの範囲でどうにかなる」レベルです。1ヶ月使い込んだ今では普通の作業はこなせます。正確な操作を高速でというシーンでは他の後塵を拝すると正直思っていますが、「仕事道具として毎日持ち運ぶ」という用途においては14mmという小ささのメリットが、操作性のデメリットを十分に上回っています。ぼくの感覚では今や25mmや34mmが「無駄に大きく重い」と感じるほどになりました。

ビルドガイドには定期的なクリームメンテが必要と書かれていましたが、1ヶ月の時点でそのようなメンテは全く不要で快適に使えています。

持ち運び:文句なし

左右のボトムケースは輪郭が一致していて、重ねると1つの直方体になります。これが持ち運びにとても効いています。

厚みはこれまで使ってきたどの分割キーボードよりも薄い。ロータリーエンコーダーとトラックボールがわずかに出っ張りますが、クッションケースに入れる前提なら無視できるレベルです。仕事用のビジネスバッグに入れると存在感がほぼなくなります。内ポケットにも滑り込みます。プライベートのスリングバッグにも入れ方を考えなくてもスマートに収まります。

さらに気に入っているのが、閉じたノートPCの上に左右2台を並べて置くとほぼフラットに収まる点です。ゴム足が効いてズレにくく、ノートPCを持つ手でそのまま一緒に持ち運べます。会議室への移動のたびにキーボードを鞄に出し入れする手間がなくなり、「ノートPCと一体で持ち歩く」という運用ができるようになりました。

「収納力・持ち運び性能・薄さ」すべてが噛み合っています。

カスタマイズ:ゴム足だけ替えた

同梱の滑り止めは、制作者ご本人がパンチでくり抜いた耐振動素材に両面テープを貼ったもの。ボトムケースにもパンチ穴と同径のくぼみが設けられていて、1mm未満の出っ張りも許さない薄さへの執念が見て取れます。

しかし、ぼくの運用では2日に1度くらい足が剥がれてしまいました。仕事で毎日使い、1日2回出し入れし、収納時は底面同士を向き合わせて重ねてソフトケースに入れる、という使い方をしていると、吸着力の強い足同士が向かい合うことで底面への接着力を上回る力がかかっていたのだと思います。

製作者の意図は尊重したいと思ってかなり悩みましたが、2日に1度ソフトケースの中で失われた足を探す作業がさすがに手間でした。やむなくハネナイトHNT003を1cm四方に切ってボトムケースに貼り替えています。

良かったところ・惜しかったところ

良かったところ

  • 持ち運び性能は過去最高。 左右を重ねると1つの直方体になる設計が効いていて、仕事鞄への存在感がほぼゼロ。ノートPC上に並べてそのまま持ち運べる運用は想定外の便利さだった。
  • 左手ロータリーエンコーダーが右親指の疲労を分散してくれる。 スクロールを左親指にオフロードできるおかげで、トラボに集中しすぎる負担が和らいだ。
  • ビルド完成度が高いときの美しさは格別。 薄さを追求した設計が「見た目」にも直結していて、完成品を見るたびに満足感がある。

惜しかったところ

  • 組み立て難易度が高い。 鬼目ナット圧入やソケット・ハンダ処理など、精度を要求される工程が複数ある。ビルド初心者には正直きつい。ある程度のハンダ付け経験が前提になる。
  • 14mmトラボの操作性は25mmに及ばない。 慣れれば実用範囲に入るが、精細な作業を高速でこなすシーンでは後塵を拝する。「14mmで問題ない」と言い切れるのは相応の練習を積んでからの話だと思う。
  • オーソリニア配列のため、爪が少し伸びると打鍵音が気になる。 指がキーキャップに対して垂直に当たりやすい設計上、爪の先がカチカチとキーキャップに触れてしまう。ぼくは爪を切る頻度を上げることで対処している。
  • 同梱ゴム足は底面同士を向き合わせて収納する運用では剥がれやすい。 製作者のこだわりが詰まった素材ゆえ悩んだが、ハネナイトへの交換で解決できた。

LiNEA40はこんな人におすすめ

  • 仕事に自作キーボードを持ち歩いていて、とにかく薄くコンパクトにしたい
  • roBaやcool642tbなどの分割トラボキーボードを使っていて、さらなる小型化を求めている人
  • ロープロファイル(Kailh Choc V2軸)への移行をすでに済ませているか、これを機に移行しようとしている人
  • ZMKでのキーマップ設定に慣れているか、学習コストを払うつもりがある人
  • ハンダ付けの経験があるビルダー。組み立て難易度は高めなので初心者には正直おすすめしにくい

逆に、25mm以上のトラボの操作性にこだわりがある人や、MX互換軸でないと嫌という人には向きません。

まとめ:仕事持ち運びキーボードの小型化追求が、ここで一区切りついた

薄さ・収納性・持ち運び性能において、これまで使ってきたどのキーボードも超えています。1ヶ月毎日仕事に持ち出しても「やっぱりこっちのほうがよかった」と後悔する気持ちは一切なく、むしろ「なんで早く買わなかったんだろう」と思っているほどです。

一方、ビルド難易度の高さと、14mmトラボの操作性の壁は無視できません。完成したら最高なのは間違いないのですが、そこにたどり着くまでの工程と、トラボに慣れるまでの期間は、誰にでも気軽に勧められるレベルではないと正直思います。

とはいえ、仕事道具として「毎日持ち歩く」という用途に真剣に向き合った設計は本物です。ぼくのキーボード小型化の旅は、ひとまずここで区切りがついた気がしています。受注販売のタイミングを見計らっている方は、ぜひチェックしてみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考 製品紹介(LiNEA40)|kay (LiNEA.keyFreaks)

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