自作キーボードにハマっていると、どうしても欲しいキットに出会ってしまうものです。今回、管理人の心をわしづかみにしたのが「roBa」。左右分割、無線、トラックボールつきという便利機能の全部盛りキーボードです。
しかし、roBaは人気がありすぎて、キット販売が始まった瞬間に即完売。販売時刻にスタンバイできない私にとっては絶望的状況でした。
なら部品を集めて作ってしまえばいいじゃないか。ということで、個別に部品をかき集めて作る「野良ビルド」にチャレンジすることにしたのところ……最後には満足できたものの、そこそこ落とし穴にもハマりました。
本記事は、その記録です。
なぜ野良ビルド?
「設計データが公開されてるなら自分で発注すればいいじゃないか。そっちのほうが早いよ」と思う方もいるでしょう。
しかし、管理人は節約好きかつ本業がIT系の技術職でして、「多少のリスクはあろうともトータルで安く作りたいし、技術課題は自前解決するプロセスも楽しみのうちだ」と考えています。
この考え方が手伝って、過去たとえば、
- Corne Miniからプレート類をむしり取って使えばCorne Xiaoが安く作れる!
- どうせ今後もキーボード作るし、ホットスワップソケットやXiao BLEみたいな汎用品はアリエクのセールでまとめ買いしとこっか!
- キースイッチはOutemu Silent Peach V3がエンドゲームなんだから、都度買い足すよりドカッとストックして使い回すか!
みたいなノリで、細かい金策を重ねたりしています。
汎用品はまとめ買うが効く一方で、PCBやケースなどの専用部品はそういうわけにはいきません。今回のケースでは
- 以前Corne Xiao用のPCBをJLCPCBで発注したが、結局最低ロットの5枚のうち3枚も余らせてしまい「もったいない」と感じてしまった
- 3DP製ケースの個別発注はそこそこ高コストになってしまうのが微妙だと感じてしまった
という、管理人なりの「もったいない」精神もでてきました。
なので、
- 汎用部品はこれまで買ってあったストック品でカバーしよう
- 専用部品はメルカリなど中古市場で良い価格の出品を待とう
と決め、リスク承知で野良ビルドにチャレンジすることにしたのです。(もちろん野良ビルド自体が楽しそうという気持ちもありました)
部品集めで味わった野良ビルドの沼


野良ビルドの第一関門は、何と言っても部品調達です。
AliExpressで汎用品は揃ったものの、PCBやケースといった専用部品が難敵でした。メルカリでの出品待ちはとても長く、すべての部品が揃うまで4ヶ月ほどかかってしまいました。こればかりは一期一会なのでしょうがないですね。
とはいえ、それで買ったものが完璧に相互適合するかとなると・・・そこに沼が待っていました。
微妙にズレてる「自称」純正ケース
メルカリでようやく手に入れた「自称」純正ケース。しかし、細部がちょいちょいズレていました。
たとえば、スライドスイッチのツマミに差し込む部品の穴の大きさが全然違って使い物にならなかったり、リセットスイッチ用の棒状のパーツがうまくハマらずボタンとしての体をなしていない、など・・・

結局、スライドスイッチ部品は使わずにケースをカッターで切り取って直接スライドスイッチにアクセスできるようにしたり、リセットスイッチはつまようじを挿し込んで操作するようにしたり、もろもろ回避策を取ることとなりました。
ケースやパーツは3Dプリント品なので、設計は正しくとも出力結果に誤差があるもの。またメルカリですから純正といえど「自称」に過ぎません。そのリスクや見抜けなかった自分に非があるのは明らか、とはいえ、数ヶ月待った結果こうなったのは残念な気分になってしまいました。
動かないトラックボールセンサー
さらに追い打ちをかけるように、トラックボールを動かしても反応しない、というトラブルに見舞われました。
はんだ付けは1箇所あたり1〜2秒で済ませ、一箇所はんだ付けするたび風を送って10秒ほど冷ましているので、熱破壊の可能性は低いと信じたいところ。またブレイクアウトボードの端子同士が導通していることも確認済。なのでストック用に買ったPMW3610センサーが粗悪品だった・・・?とはいえ中身まではわからないので真相は闇の中です。
このようになんとか原因を切り分けて対処しようとしたものの、結果実らず。その過程でストックしてあったPMW3610センサーを2個無駄打ちすることとなりました。
結局、泣く泣くcool642tbで使っていた動作確認済のブレイクアウトボード+センサーを流用することとなってしまいました。
あわないスライドスイッチ
これは単純に自分の部品調達ミスなのですが、ストックしてあったスライドスイッチがroBaの部品リストに入っているものと異なるものでした。あーあ。
ただし端子の位置が少しズレているだけだったので、スライドスイッチとPCBの間に厚めの両面テープをつけ、その隙間を利用して端子少し曲げてPCBのランドに近づけてはんだ付けする・・・という力技でなんとかしました。
機能的には問題ないものの、普段から動かすスライドスイッチが設計と違う作りになっているので耐久性は落ちるのかなと思います。
これらはキットなら無縁だった
キット購入の場合、このような物理的な問題や部品の適合性、調達ミスなどのリスクは、事前に制作者さんで刈り取っていただいているもの。
しかし、野良ビルドなんでも自己責任の世界。コスト重視で個別調達した結果、汎用部品の無駄打ちや回避策の検討と施行が必要となり、追加で金銭的・時間的なコストを支払う結果となりました。もちろんその過程は楽しかったんですが、冷静に制作コストだけ見るとコスパ悪かったです。
今回の件で「あぁ、キットってなんて素晴らしいんだろう」と身にしみて感じたのでした。制作者さん
使えば快適。心配は杞憂

数々の沼を乗り越えて完成したroBaですが、使い始めるとその苦労を忘れるほど快適でした。
長い間使っていたKeyball 39とキー配列がほぼ同じであることもそうなのですが、ファームウェアのセットアップとLiPoバッテリーまわりで心配が払拭されたことが大きかったのかなと思います。
ファームウェアがほぼ使い回せた
特に助かったのがファームウェア。
roBaは、以前作ったcool642tbとキー構成が酷似しています。なのでcool642tbのキーマップ(.keymapファイルのbindingsやmacroなどのセクション)をそのままコピペで流用できました。
また、ファームウェア内で参照しているリポジトリも似ているため、.confやwest.yamlなどの設定もほぼ手を入れずに移植できました。
cool642tbでかなり苦労したこともあり、あっさり動いて拍子抜けです。
LiPoバッテリーの心配は杞憂だった
心配していたLiPoバッテリーも問題なさそう。バッテリーはCorne Xiaoからむしり取った220mAhのものを使っています。容量が小さいので電池持ち微妙かもと思ったものの、実際に仕事に投入してみたら実際は1日あたり8〜10%程度の消費で、満充電なら余裕で1週間は持つ計算。週イチ充電で問題なさそう。
また電池が少なくなってきたらUSBケーブルで充電しながら使えるそうですし、Win/Mac対応のroBa用電池残容量ウィジェットも紹介いただけました。業務継続性もOKそうな気がします。
これまでずっとLiPoバッテリーベースのキーボードは電池切れが心配で、あれこれ考えたり調べたりしていましたが、全くの杞憂でした。頭で悩むより、実際に手を動かして試すほうが早い、という一幕だったのかなと思います。
まとめ
- 野良ビルドの道は部品集めから困難続き
- トラブルは自己責任なので覚悟は必要
- だが、得られる達成感と学習効果は甚大
- キットは偉大。買えるならキットで買おう
今回、roBaを野良ビルドしてみて、手軽さと引き換えに得られる苦労=楽しさと、ビルド後の快適さを存分に味わえました。またいろいろ学びを得ることもできて、個人的には満足です。同時に、キットの偉大さを思い知る結果となりました。
roBa自体に関しては、「これまで慣れてきたKeyball 39のキー配置を無線で利用できる」というメリットが一番大きいと感じました。
最後に・・・roBaキット難民の皆さん、諦めずに野良ビルドにチャレンジするのも悪くないですよ。自作沼の深さを再確認しつつ、新しい楽しみを見つけられると思いますので、ぜひ選択肢の一つにどうぞ。沼の底で待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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