先日公開した「TRUEFREE EarFit DS1」のレビュー記事。あの一件以来、管理人のオープンイヤー型イヤホンへの探求心は、ますます高まっています。「これ1台だけでOK」という理想を追求する上で、装着感、音質、マイク性能、音漏れなど、あらゆる要素のベストバランスを求めるに値する、実に面白い題材だと感じたからです。
今回レビューするのは、管理人自身が長く信頼を寄せているEarFunブランドの「OpenJump」。EarFunは、解像度の高い音質を土台としながら、あらゆる利用シーンをカバーする総合力の高さが魅力のブランドです。そのEarFunが満を持して投入してきたオープンイヤー型とあれば、期待しないわけにはいきません。
前回のDS1では、数時間装着していると「一度外そうかな」と感じてしまう、長時間利用ならではの課題が残りました。果たしてEarFun OpenJumpは、この課題をどう乗り越えるのか。本記事では特に「1日中つけっぱなし」という、最も過酷な要求にどう応えてくれるのか、その核心に迫ります。

EarFun OpenJumpの概要とデザイン
まずは製品の全体像をチェックしていきましょう。EarFunブランドらしい哲学が、パッケージから本体デザインの細部にまで貫かれています。
開封と付属品:いつも通りの安心感



箱のデザインは、EarFunのブランドカラーである黄色をあしらったお馴染みのもの。このパッケージを見ると「ああ、EarFunの製品だな」という安心感を覚えます。
中身はイヤホン本体と充電ケース、充電用のUSB-Cケーブル、そして説明書類と、非常にシンプル。箱や付属品はミニマルですが、製品への期待感を高めるには十分な構成です。
外観:コストをかけるべき場所を心得た質実剛健なデザイン



充電ケースは非常に軽量で、表面仕上げも少しプラスチッキーな印象。電池残量のデジタル表示など、過剰に飾る機能はありませんが、Qi規格のワイヤレス充電といった便利な機能はしっかりと押さえています。
これは決して手抜きではないでしょう。数々のイヤホンを世に送り出してきたEarFunだからこその「コストの削りどころ」を熟知している証拠。充電ケースは高級感こそありませんが、これはイヤホン本体にこそコストを集中させるという、EarFunの賢明な判断だと管理人は考えます。




そして、その主役である本体。第一印象は「とにかく細い」です。スピーカー部分と、耳の後ろに当たるバッテリー部分が、柔軟性のあるワイヤーで繋がっています。まるで「やじろべえ」のように、両端の重さで均衡を保つという設計思想が、一目で見て取れます。
色は黒と銀のモノートーンで、ブランドロゴも控えめ。表面はシリコン系の防水素材で覆われており、IPX7の高い防水性能も確保されています。無駄な装飾を削ぎ落とし、機能性を追求した結果のミニマルなデザインに惚れ惚れします。 まさに質実剛健という言葉がぴったりの逸品です。
EarFun OpenJumpの核心:あえて「固定しない」という設計思想
デザインに続いて、いよいよ使用感のレビューです。特に装着感については、この製品の評価を大きく左右する、最も重要で、そして最もユニークなポイントでした。
第一印象は「ぷらぷらして心もとない」装着感
まず耳につけてみて、すぐに「軽い!」と感じました。本体が細いワイヤーで構成されているおかげで、メガネのツルとの干渉もほとんど気になりません。ここまでは非常に好印象です。

しかし、少し首を振ったり、下を向いたりすると、その印象は少し変わります。このイヤホンは耳にしっかり固定するというより、「耳に引っ掛けて、ぶら下げておく」感覚に近いのです。そのため、動きに合わせてスピーカー部分がぷらぷらと揺れ、耳の内側にコツコツと当たることがあります。装着というより「耳に乗せている」感覚に近く、正直なところ、最初はかなり人を選ぶだろうな、と感じました。
【発見】長時間利用で気づいた「ぷらぷら感」の真価
初日の時点では、この独特の装着感に慣れず「これは自分には合わないかもしれない」と感じかけていました。しかし、数日がっつり使い続けてみて、この評価は180度くつがえされます。この装着感こそが、EarFun OpenJump最大の美点だったのです。
以前レビューしたTRUEFREE EarFit DS1は、耳への固定力はしっかりしていました。しかしその分、3〜4時間もすると耳の接触部分に圧迫感を覚え、「一度外したいな」という気持ちが湧いてきたのも事実です。耳に触れ続ける部分が、少しずつ痛くなってくるのです。
一方でOpenJumpは、そもそも耳に強く固定されていません。そのため、長時間つけっぱなしでも圧力が一点に集中せず、不快感が驚くほど少ない。朝、耳にかけてから夕方まで、一度も外すことなく快適に過ごせました。この「ぷらぷら感」は欠点ではなく、1日中つけっぱなしという目的を達成するために、あえて耳に強く固定しないという意図の表れだったのです。 なめてました。これは単なる設計ではなく、「1日中つけっぱなし」という目的を突き詰めた末にたどり着いた “思想” と呼ぶべきものです。
実用性の徹底レビュー
装着感という最大の個性を確認したところで、次は音質やマイク性能など、イヤホンとしての基本的な実力をチェックしていきましょう。
音質:「ながら聴き」には十分以上、でもLDACは必要か?


オープンイヤー型としては、かなり良い音質だと感じます。特に低音を強調するなど、構造的な弱点を補おうというチューニングの努力が見られます。このままでも十分に楽しめますが、このイヤホンのポテンシャルは、専用アプリで調整することでさらに引き出されます。充実したイコライザー設定もそうですが、過去にEarFun Air 2 NCのレビューですばらしさを紹介した「シアターモード」のサラウンド効果はオープンイヤー型のOpenJumpでも健在です。
しかし、これはあくまで「ながら聴き」が前提。耳を塞ぐカナル型のように音楽の世界に没入するには向きませんし、没入しようとして音量を上げれば相応に音漏れします。音質と音漏れの両立をを求めるなら迷わずカナル型を選ぶべきです。音楽に没入するのではなく、生活の中にBGMを溶け込ませるような使い方に、このイヤホンの真価があります。
その上で、メーカーが推す「LDACコーデック対応」について。たしかに高音質な規格ですが、スピーカーと耳の間に空間があるオープンイヤー型では、その微細な表現が空気中に拡散してしまいがちです。正直なところ、LDACの恩恵は限定的。バッテリー持ちを優先してAACやSBCで運用する方が、トータルでの満足度は高いと感じました。 ちなみに、地下鉄の車内など、騒音が激しい場所では音楽がかき消されるのはご愛嬌。これはオープンイヤー型の宿命として割り切りましょう。
マイク性能:Web会議も音声入力も、日常の8割はこれでOK
マイクの音質は、自室でのWeb会議や、静かな場所での音声入力といった用途には十分使えるレベルです。実際に、この記事の原稿の一部はOpenJumpを使って音声入力で作成しましたが、認識精度に全く問題はありませんでした。
もちろん、万能ではありません。相手には自分の声が少し遠くに聞こえるようですし、電車の中のような騒がしい場所での通話は正直きつい。しかし、新幹線の中でもクリアに声が届くような数万円の業務用インカムと比べるのは酷というもの。日常的な用途の8割はカバーできますが、騒音下での重要な通話など、残り2割のシビアな環境では専用機に軍配が上がります。
バッテリーと接続性:1日中つけっぱなしを支える基本性能

「1日中つけっぱなし」という運用は、強力なバッテリーがあってこそ成り立ちます。その点、OpenJumpは非常に優秀です。
LDACオフなら公称11時間の連続再生。実際に朝から晩まで使っても、バッテリー切れの心配は一切ありませんでした。休日に満充電状態で装着・ペアリングし、空き時間に音楽や動画を楽しむ、という使い方で12時間過ごしたあとの残量は80%でした。EarFun製のイヤホンはバッテリーが劣化しにくい印象があり、少なくとも1年程度はこの快適な運用が続けられるのではないでしょうか。
また、2台のデバイスに同時接続できるマルチポイントにも対応。仕事用のPCとスマートフォンにペアリングしておけば、PCでWeb会議をした直後にスマホにかかってきた電話に出る、といった操作がシ-ムレスに行えます。2台までのマルチポイント接続に対応しており、PCとスマホを行き来する現代の働き方にぴったりです。 個人的には接続先が3台に増えると嬉しいのですが、これは贅沢な悩みかもしれませんね。
防水性能:IPX7の実力は本物か、シャワーで試してみた
「1日つけっぱなし」となると、突然の雨やシャワーといった水回りでの利用も避けては通れません。OpenJumpの防水性能はIPX7。これは「水深1mの真水に、30分間沈めても浸水しない」ことを意味する、かなり高いレベルの防水規格です。
しかし、スペックはあくまでスペック。特にスピーカー部分のメッシュ構造は、本当に大丈夫なのかと気になってしまいます。そこで管理人、人柱になるべくOpenJumpを装着したままシャワーを浴びてみました。

結果、シャワーの始まりから終わりまで、音楽が途切れることもなく全く問題なく稼働し続けました。 もちろん、耳の周りを洗うときは一時的に外しますし、使用後はしっかり水気を拭き取るべきですが、この防水性能は看板に偽りなしです。
ただし、ひとつだけ肝に銘じておきたいことがあります。IPX7はあくまで「常温の真水」に対する性能保証。お湯や石鹸水、入浴剤などが混ざった液体は、問答無用で保証対象外です。 長風呂やサウナでの使用は、製品の寿命を縮める行為だと割り切りましょう。
専用アプリ:イヤホンの体験価値を高める「もう一つの本体」
ここまで紹介してきた音質や接続性といったハードウェアとしての基本性能。これらを下支えし、EarFun OpenJumpの体験価値を何倍にも高めているのが、専用アプリの存在です。


EarFunは以前からアプリをコツコツと強化しており、その機能は今や圧倒的。プロが監修したイコライザー設定、音の広がりを生む「シアターモード」、集中力を高めたりリラックスしたりできる「環境音」の再生機能など、他社製品のアプリと比較して頭ひとつ抜けていると言えるでしょう。単なるおまけではない、製品価値を何倍にも高めるこのアプリの作り込みは、看板に偽りなしです。

競合製品とのポジショニング比較
群雄割拠のオープンイヤー型イヤホン市場。その勢力図を詳しく見ていくと、EarFun OpenJumpが実にユニークな立ち位置にいることがわかります。
なお、念のためお伝えしておくと、本セクションで比較している製品のうち、Oladance, Shokz, Ankerの3製品は管理人自身が長時間使い込んだわけではありません。あくまで公表されている製品コンセプトや市場での評価を基に、「設計思想」という観点から比較したものであることをご了承ください。
ブランド / 製品名 | 価格帯の目安 | コンセプト / 設計思想 | 得意な利用シーン |
---|---|---|---|
Oladance OWS Pro | 約35,000円 | プレミアム&高音質 オープンイヤー型で最高の音質と快適性を追求。「着るスピーカー」 | 室内でのBGM鑑賞、リラックスタイム |
Shokz OpenFit | 約22,000円 | 安全性&安定性 激しい運動でも外れないフィット感と安全性を重視。 | ランニング、ジム、アウトドアアクティビティ |
Anker Soundcore AeroFit | 約10,000円 | 優しいフィット感 耳を優しく、しかし確実にホールドする快適な装着感を追求。 | 長時間のデスクワーク、普段使い |
EarFun OpenJump | 約9,000円 | 長時間快適+全部入りコスパ あえて「固定しない」ことで、1日つけっぱなしでも疲れない快適性を実現。 | 1日中つけっぱなし運用、ながら聴き全般 |
TRUEFREE EarFit DS1 | 約6,000円 | フィット感のカスタマイズ イヤーピース交換でフィット感と音漏れを調整できるユニークな機構。 | オープンイヤー初心者、自分の耳に合うか不安な人 |
DS1が「イヤーピースでフィット感を調整し、固定する」方向を目指したのに対し、OpenJumpは「あえて固定しない」という真逆のアプローチを取っているのが非常に興味深い点です。
高価な多機能機と、シンプルな低価格機に市場が分かれる中で、EarFun OpenJumpは「必要な機能を全部載せつつ1万円以下」という確固たるポジションを確立しています。
とはいえどれも一長一短。好みによって選ぶべきものは変わります。簡単にまとめると・・・
- 最高の音質のためなら投資を惜しまない
→ Oladance OWS Pro がおすすめ - 激しい運動でもズレない安定感が第一
→ Shokz OpenFit が最適 - 優しくしっかりフィットしてほしい
→ Anker Soundcore AeroFit が有力候補 - オープンイヤー型は初めて。まずはお手頃価格で試したい
→ TRUEFREE EarFit DS1 が出発点 - 1台だけの「つけっぱなし運用」にしたい
→ EarFun OpenJump を強く推薦
もしあなたが「1日中、着けていることを忘れるほど快適で、あらゆるシーンに対応できるイヤホンが欲しい」と考えるなら、EarFun OpenJumpは最も有力な候補になるはずです。
まとめ
総合評価:
- あえて固定しない、長時間の快適装着
- 1万円以下で「全部入り」の高コスパ
- 独特の「ぷらぷら感」に慣れが必要
- 構造上の音漏れと、低い遮音性
EarFun OpenJumpを数日がっつり使ってみて、「これはオープンイヤー型イヤホンの “最終終着点” のひとつだな」と感じました。価格を含めてとてもバランスの取れた良品だと思います。
★4.5の理由は、あえて固定しないぷらぷら感は人を選ぶと感じたためです。ただ、管理人は1日で完全に慣れることができましたし、欠点にすらならない可能性もある点は付記しておきます。
「1日中、ストレスなくつけっぱなしにできるイヤホンが欲しい」。この明確な目的を持つ人にとって、EarFun OpenJumpはドンピシャな選択肢となるでしょう。 気になった方は、ぜひチェックしてみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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