管理人の無線自作キーボードへの挑戦は、正直に言って個人レベルでは投資対効果(ROI)は出ていないと思います。
しかし、この遠回りの果てに、管理人は失敗の先にある「コミュニティへの貢献」という価値を見出すことになりました。
これは、一人のキーボード好きが無線沼にハマり、有線の価値や、記事を書く意味を再発見するまでの、遠回りの記録です。
管理人の足を絡め取る「無線沼」

すべての始まりは、純粋な憧れでした。デスクの上を這うケーブルをなくし、ミニマルで美しい作業環境を構築したかったのです。物理的な制約から解放される無線(ワイヤレス)という選択肢は、果てしなく魅力的に見えました。
しかし、現実は甘くありません。Bluetooth接続の不安定さ、トラボの入力遅延(ラグ)、スリープからの復帰トラブル。有線ならそもそも存在しないはずの問題が、次々と襲いかかってきました。特にトラボの入力遅延(ラグ)には悩まされ続けました。
そのなかで、本来の目的だった「効率的で快適な環境づくり」は忘れ去られ、無線を安定させること自体が目的となる「手段の目的化」という典型的な沼にハマっていたのです。
で、ふと我に返った時、頭をよぎったのです。「この時間とコスト、有線ならゼロだったのでは?」と。
無線化の理想と現実

理想:ケーブルレスがもたらす究極の解放感
もちろん、無線環境には素晴らしい点も多くあります。ケーブルがないだけで、デスク上の自由度は劇的に向上します。キーボードの配置も思いのまま。
この解放感と見た目の美しさは、一度味わうと後戻りできないと感じるほど。正直、ズルい魅力です。
現実:見えないコストとの戦い
しかし、その美しさには相応の代償が伴います。無線対応の基板やバッテリーといった金銭的コスト。これは目に見えるので、まだ納得しやすい。本当に厄介なのは、目に見えない「時間的コスト」です。
ファームウェアの学習、原因不明の接続不良、OSアップデートとの相性問題。これらを解決するためのトラブルシューティングに、一体どれだけの時間を溶かしたか分かりません。
解決のために技術情報を漁り、追加のパーツをいくつも購入する日々。書いた記事の数もそこそこ積み上がってきました。なんだこれ。
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再発見:有線接続という「究極の安定」

無線沼でのたうち回ったからこそ、管理人は有線接続の価値を再発見しました。「ただ繋ぐだけで、100%の性能を発揮する」。当たり前のことですが、これがいかに尊いことか。
バッテリー残量を気にする必要も、接続が切れる不安もありません。余計なことを考えず、ただタイピングに集中できる。これは思考のノイズを生まない、パフォーマンスを追求するための「積極的な最適解」なのではないでしょうか。
ずいぶん遠回りして、以前書いた左右分割トラボ付きキーボード。仕事で使うなら有線と無線どっち?の結論へ再訪した。そんな気分です。
あらためて、どんな人に「無線自作キーボード」はおすすめできるか

では、無線化は誰にとっても「悪」なのでしょうか。そんなことはありません。以下のような方であれば、挑戦する価値は十分にあるでしょう。
- 試行錯誤のプロセスそのものを「冒険」として楽しめる人
- 複数のPCやタブレットを頻繁に行き来するなど、無線化する明確で強い目的がある人
- 「デスクにケーブルが1本もない状態」に、コストを度外視できるほどの価値を感じる人
これらに当てはまらないのであれば、一度立ち止まって「本当に無線は必要か?」と自問してみることを、個人的には強くおすすめします。
まとめ
無線自作キーボードは、成功した時のメリットは大きいですが、そこに辿り着くまでのコストと不確実性があまりにも大きい。そのため、人を選ぶガジェットと言わざるを得ません。万人におすすめはできませんが、ロマンはあります。
- 良い点
- ケーブルレスによる究極の解放感と美観
- 複数デバイス運用の柔軟性
- 成功時の「やりきった」という達成感と学び
- 惜しい点
- トラブルシュートに消える膨大な時間コスト
- パーツや追加機材にかかる金銭的コスト
- 常に付きまとう接続性への精神的消耗(思考のノイズ)
管理人の無線キーボードへの挑戦は、かけた時間とコストを考えると、個人的なROIで見れば「負け」かもしれません。正直きついと感じる瞬間も多々ありました。
しかし、この一連の苦労と試行錯誤を発信することで、これから同じ道を通る誰かの時間を節約できるかもしれない。管理人が「人柱」になった記録を記事に書くことで、コミュニティ全体の知見が少しでも深まるのなら、この遠回りは決して無駄ではなかったのかも、とも思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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