EarFun Wave Pro X レビュー | 音は正統進化、LE Audioは荒削り

4.5

2024年にレビューしたEarFun Wave Proは、いいヘッドホンなのに、音のバランスにもったいなさが残る機種でした。

後継のEarFun Wave Pro Xは前作より価格帯が上で、LE Audioにも対応しています。値段が上がったぶん、あのもったいなさは消えたのか。

聴いてみると、Wave Pro Xは前作の音の印象(トレードオフがありもったいなさをはらむ)を何枚も上回りつつ、EarFunの他イヤホンの機能進化を余すことなく吸収した、正統進化版です。満足度は高く、減点はぼくのPixel 8aでLE Audioがまだ使えなかったという1点だけです。

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EarFun Wave Pro Xで確かめたいこと|前作Wave Proからの変化

前作のEarFun Wave Proでは、女性ボーカルに音量を合わせると伴奏の音色を楽しみきれず、伴奏に合わせるとボーカルがけたたましく感じる、というトレードオフがどうしても気になっていました。ぼくにとっては星を0.5下げるほどの弱点で、解消には1万円を超える値段が要るとも感じた機種です(詳しくは前作のレビュー)。

前作との違いと、そこから決めた検証ポイントは次の3つです。

  • 価格帯が一段上がった → 前作のトレードオフは解消されたか
  • 前作から2年、EarFunは他のイヤホンを出し続けてきた → その開発の知見がどう活かされているか
  • LE Audioに対応した → 低遅延(動画との同期、PCゲームの没入)と低電力を期待して、LE Audioを使いたい

聴いた環境は、Pixel 8aとAmazon Music Unlimitedのハイレゾ音源です。コーデックはaptX HDが基本で、ANCはアダプティブ、イコライザーはオフにしています。

EarFun Wave Pro Xの設計・機能・価格

EarFun Wave Pro X レビュー 外観 机に置いて真上から見たハウジング
ハウジングはCDパターン加工を施したアルミ合金。

EarFun Wave Pro Xのドライバーは、独自のDCAA同軸デュアルドライバー構造です。40mmのDLC(Diamond-like Carbon)複合振動板と、10mmのLCP(液晶ポリマー)振動板を同軸に配置しています。公式の説明は「力強い低音と繊細な高音を両立」です。

ANCは8基のマイクを使うハイブリッド方式で、公式値は最大50dB。前作の-45dBから上がっていて、着けたときの静寂も看板どおりです。再生時間はANCオフで最大90時間、オンで最大50時間。重さは約259gです。

専用アプリのEarFun Audioには、他のEarFun機で育ってきた機能がそろっています。ANCのモード切り替えと手動調整、ゲームモード、パラメトリックEQ対応のイコライザー、ボタン機能のカスタマイズ、LEオーディオの設定です。

価格は定価16,990円で、前作EarFun Wave Proの今の定価は11,990円です。この2年で円安が進み、値段の水準は1.3倍ほどになったとぼくは見ています。その感覚で2024年の水準に直すと、前作の11,990円は1万円を切り、Wave Pro Xの16,990円は約13,000円。前作のときにトレードオフの解消に要ると感じた、1万円超えの価格帯へ一歩踏み出したヘッドホンです。

EarFun Wave Pro Xレビュー

音まわりと使い勝手は期待どおりで、LE Audioだけがまだ使えません。

音質

前作のトレードオフは、EarFun Wave Pro Xで解消しています。MAISONdesの「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」を聴くと、それがはっきり分かります。

ボーカルの裏のハーモニーも伴奏も、全部の旋律をくまなく聞き分けられる音量が出ます。前作で気になっていた、ボーカルと伴奏の音量の取り合いが起きません。

Parov Stelarのエレクトロスイングでは、裏で鳴る小さなパーカッションと、レコード調にミキシングされてプツプツ切れる女性ボーカルが同居します。曲の雰囲気に肌触りが出て、前作よりバランスが良い印象です。

帯域ごとに分けると、傾向は次のようになります。

  • 低音はインパクト強め、キックは控えめ 鼓膜に圧をかける主張はなく、旋律全体の土台を固める安心感がある
  • 中音は優しく丸い ピアノと相性がいい。ダマにはならず、左右の分離でカバーされている
  • 高音はクリスピー寄り 若干シャリつくが、耳をつんざくほどではない。クラップのわずかなズレ、スネアの細かな振動、遠くで鳴る小さなパーカッションまで拾う

解像度は、左右の分離に振り切っています。左右でエレキギターがペケペケ鳴る曲なら、左と右それぞれでどの旋律を追っているかが分かります。低音と高音は明確に追いかけられる一方、中音域は若干まとまる印象です。それでも左右に振り分けてミキシングされた曲なら、旋律をちゃんと聞き分けられます。

一方で、上下や奥行きはそれほどでもありません。包まれるようなサラウンドとは別物です。ライブの楽曲に浸る没入ではなく、楽曲の構成要素を1つずつ取り出して吟味し、それが組み合わさる様子を鑑賞する。そんな根掘り葉掘りの没入が好きな人には、ぴったりだと思います。

ボーカルは、人の声にフォーカスしてチューニングしたのかと思うほど明瞭です。他のイヤホンではソロにしか聞こえなかったメロディーラインが、実は裏でハモっていた、ということもありました。

曲との相性では、Nulbarichのようなアダルトな雰囲気の曲がよく合う印象です。Perfumeを聴くと、音の構成を追いかけるのが楽しくなります。

米津玄師のように、音の厚いパートと薄いパートを混ぜてくる曲は、二重に楽しめます。厚いパートではいろいろな旋律を追いかけて組み上げ、薄いパートではそれが途切れて「お?」となる。甘いものとしょっぱいものを交互に食べているような感覚で、ボーカルの理解度も上がります。どんな曲でも楽しみどころを見つけられる、器用なチューニングだと思います。

接続方式ごとの音

aptX HD、LDAC、有線と、いわゆるハイレゾ級のつなぎ方なら、どれで聴いても音はあまり変わりません。EarFun Wave Pro Xでは、つなぎ方よりスピーカーの性能が音を決めている印象です。

そのため、普段はaptX HDを使っています。LDACはスマホの電池の減りが早いからです。LE AudioのLC3は、音が出ないため比べられていません。

EarFun Wave Pro X レビュー 端子 ハウジング側面のUSB-C端子
USB-C端子は充電だけでなく、有線の音声入力にも使える。

有線は、USB-Cケーブルでスマホと直接つなげば鳴ります。AUX→USB-C変換ケーブル経由では音が出なかったので、有線で聴くなら素直にUSB-Cケーブルを使いましょう。

装着感

重さは気にならず、眼鏡をかけたまま着けても痛くなりません。

バッテリーとBluetooth接続

フル充電から5日間、aptX HDで合計12時間ほど使っても、バッテリーはびくともせず80%残っています。同じ12時間で、Bluetooth接続は一度も途切れていません。

わが家はPCやタブレット、スマート家電が多く、電波が飛び交いがちな環境です。その中での瞬断ゼロなので、接続の安定性は気にするところがありません。

接続まわりでは、マルチポイントにも対応していて、2台のデバイスに同時につなげます(アプリでの名前はデュアルデバイス接続)。ぼくにとってマルチポイントは、ヘッドホンの使い勝手を考えるときの足切りポイントで、Wave Pro Xはそこを満たしています。

LE AudioがPixel 8aで無音になる件

Pixel 8aにつなぐと、再起動や再ペアリングのあとはLE Audio(LC3)として認識されます。ところが、再生しても音がまったく出ません。

EarFun Wave Pro Xのファームウェアは最新のv1.5.4、スマホはPixel 8a(Android 15/16)です。アプリでLDACなどの高音質コーデックを切っても、LC3には切り替わらず、Classic Bluetoothの最低規格であるSBCでつながります。

試した対策は次のとおりで、どれも効果がありませんでした。

  • スマホ、ヘッドホン本体、音楽アプリの再起動
  • ペアリングの完全解除と再ペアリング
  • EarFunアプリでHDコーデック(LDAC/aptXなど)を無効化
  • EarFunアプリの「安定した接続を優先」のオン/オフ切り替え
  • マルチポイント(2台同時接続)の完全オフ
  • Bluetooth設定の「空間オーディオ」を無効化
  • Bluetooth設定の「メディアの音声」スイッチの入れ直し
  • 開発者オプションの「Bluetooth A2DPハードウェア オフロード」を無効化してから有効化
  • 開発者オプションでLC3(LE Audio)コーデックを強制指定
  • 本体の音量+と-の同時長押しで、工場出荷状態にリセット

Pixel 8aは、他社のイヤホンならLE Audioで正常に鳴ります。OSやシステム側の設定を尽くしても、Wave Pro Xは無音のままです。そこでぼくは、原因はWave Pro X(v1.5.4)側のLE Audioのデコードかパケット処理の不具合だと判断しています。

前にレビューしたEarFun Air Pro 4+も、Pixel 8aで最初からLE Audioが使えたわけではありません。しばらくしてから使えるようになり、今も問題なく動いています。Wave Pro Xはおそらくファームウェアがまだ枯れていないだけで、更新で対応されるはずだと思います。メーカーの発表に基づく話ではなく、あくまでぼくの見立てです。

それまでは、LE Audioでの接続は諦めるしかありません。

Pixel 8aで低遅延を求めるなら、Classic Bluetoothでつないで、EarFunアプリのゲームモード(低遅延モード)を使うのが現実的な回避策です。ただし、ゲームモードでどこまで遅延が縮むかは試していません。期待していた低電力のほうも、LE Audioが鳴らない以上、確かめようがない状態です。

EarFun Wave Pro Xはどんな人向きか

向いているのはこんな人です。

  • LDACやaptX HDで聴ければいい人 LE Audioを除けば減点がない
  • 楽曲を分解して聴くのが好きな人 左右の分離に振り切った解像度で、旋律を1本ずつ追える
  • 前作Wave Proのボーカルと伴奏の取り合いが気になった人 そのトレードオフが解消している

逆に、次のような人は無理に選ばなくていいと思います。

  • LE Audioに強いこだわりがある人 Pixel 8aでは接続できても音が出ない(v1.5.4時点)
  • 包まれるようなサラウンドを求める人 上下や奥行きは控えめで、左右の分離寄り

よくある質問

Q
Pixel 8aでLE Audioは使えますか?
A

本レビュー時点(2026年11月1日)のぼくの環境では、使えませんでした。Pixel 8aにつなぐとLE Audio(LC3)として認識されますが、再生しても音がまったく出ません。試した対策は、どれも効果がありませんでした。Pixel 8aは他社のイヤホンならLE Audioで正常に鳴るため、原因はWave Pro X(ファームウェアv1.5.4)側の不具合だとぼくは判断しています。ファームウェア更新で対応されるはずというのは、メーカーの発表ではなくぼくの見立てです。低遅延を求めるなら、回避策はClassic Bluetoothでつないで、アプリのゲームモード(低遅延モード)を使うことです。ただし、ゲームモードでどこまで遅延が縮むかは、まだ試していません。

Q
aptX HD、LDAC、有線で聴くと、音は変わりますか?
A

いわゆるハイレゾ級のつなぎ方なら、どれで聴いても音はあまり変わりません。Wave Pro Xでは、つなぎ方よりスピーカーの性能が音を決めている印象です。ぼくは普段aptX HDを使っています。LDACはスマホの電池の減りが早いからです。有線は、USB-Cケーブルでスマホと直接つなげば鳴ります。AUX→USB-C変換ケーブル経由では音が出なかったので、有線で聴くならUSB-Cケーブルを使うのが素直です。LE AudioのLC3は、音が出ないため比べられていません。

Q
ANCはどのくらい効きますか?
A

公式の値は最大50dBです。前作EarFun Wave Proの-45dBから上がっています。ANCは8基のマイクを使うハイブリッド方式で、着けたときの静寂も看板どおりでした。

Q
価格はいくらですか?
A

定価は16,990円です。前作EarFun Wave Proの今の定価は11,990円で、この2年で円安が進み、値段の水準は1.3倍ほどになったとぼくは見ています。その感覚で2024年の水準に直すと、Wave Pro Xは約13,000円になります。前作のときにトレードオフの解消には1万円を超える値段が要ると感じていて、Wave Pro Xはその1万円超えの価格帯へ一歩踏み出したヘッドホンです。

まとめ:LE Audioを使わないならおすすめ

総合評価:

EarFun Wave Pro X レビュー 音質 ハウジングのearfunロゴに寄ったところ
前作の音のもったいなさを超えてきた。

EarFun Wave Pro Xは、前作の音の印象(トレードオフがありもったいなさをはらむ)を何枚も上回りつつ、EarFunの他イヤホンの機能進化を余すことなく吸収した、正統進化版です。

満足度は高く、★5としたいところです。ただ、個人的にこだわっていたLE Audioで、本レビュー時点(2026年11月1日)のぼくの環境では音が出ません。それが悲しかったので、★4.5にしました。

とはいえ、LE Audioにこだわりがなく、LDACやaptX HDが使えればいい人なら、★5でいいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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