torabo-tsuki LP(XS)を、仕事用の持ち歩きキーボードとして使ってきました。ただ、キーピッチの17mmが窮屈で、一度はこのピッチから離れると決めたほどです。
それでも、キートップの形が違えばしっくりくるのでは、という考えが頭に残りました。前に載せていたほぼフラットなキーキャップでは、指の配置を指先で探りながら打っていて、そのぶん指先に力が入っていたからです。
そこで、行ごとに傾斜のついた3Dプリント製キーキャップ、RidgeCapの中古をメルカリで買いました。同じtorabo-tsuki LP(XS)に載せ、前のほぼフラットなキーキャップと比べています。
プライベートで4時間ほど使い、そのあと仕事現場に持ち込んで3日。17mmの窮屈さはキートップの形で和らぎ、指が迷子になることもなくなりました。打鍵音も静かです。ただ、窮屈さはゼロにはなりません。ただ仕事道具としての実用性は格段に上がりました。
キートップの形しだいで、17mmピッチはぼくの射程圏内に入ると分かったのが一番の収穫でした。
RidgeCap (.stl) – アライのおみせ – BOOTH
17mmの窮屈さは、キートップの形で変わるのか|試した環境と検証の設計

機体は、torabo-tsuki LP(XS)のまま。トラボは19mmのPOM球を載せています。キーキャップをRidgeCapに替え、検証の途中でスイッチも替えています。
torabo-tsuki LP(XS)の17mmピッチは窮屈だった
torabo-tsuki LP(XS)の17mmピッチは、ぼくの指には窮屈でした。torabo-tsuki LP(XS)のレビューで書いたとおり、速く打つと薬指と小指がこすれます。その使いづらさから、一度はこのピッチを離れる決断までしています。
それまで載せていたキーキャップは、メルカリで買ったほぼフラットなもの。そのせいか、キーが必要以上に重く感じました。また、ホームポジションから指が迷子になりやすく、然るべき位置に指を置くために、指先で探る手間もかかりました。そのせいか指先に力が入り、指の配置を安定させるために脳のリソースも使っていました。
キートップの形を変えれば、この影響を減らせるのではないか。17mmゆえの窮屈さは消えないかもしれないものの、打鍵のしにくさの一部が消えれば、実用上は問題ないレベルになるのではないか。これが起点です。
検証の問いと観点
窮屈さを感じた17mmキーピッチでも、キートップの形を最適化すれば使いやすくなるのか。この問いを確かめるため、6つの観点で実験してみることにしました。
| 観点 | 方法 |
|---|---|
| 打ちやすさと速度 | 寿司打と日常の打鍵 |
| 薬指と小指の窮屈さ | プライベートと仕事で打鍵 |
| 打鍵音 | 静音軸で打鍵 |
| 高さと持ち運び | 仕事鞄で3日携行 |
| 3Dプリントの品質 | カタッと鳴るキーを確認 |
| 長時間の疲れ | 4時間ほど続けて打鍵 |
使った期間は、プライベートで4時間ほどと、仕事現場に持ち込んでの3日です。3Dプリントの品質と長時間の疲れは、前のキーキャップとは比べていません。
スイッチはKailh Purple Iris MiniからKailh Deep Sea Silent mini Isletへ
検証の途中で、スイッチをKailh Purple Iris MiniからKailh Deep Sea Silent mini Islet(以下、Islet Mini)に替えました。キートップに高さが出たことで、ほしいストロークと押下圧が変わったためです。
ストロークのほうは、MX軸に慣れていたことが関係しています。キートップにある程度の高さがあると、どうしても適度なキーストロークがほしくなる。
押下圧は、ぼくの個人的な好みです。ほぼフラットで薄いキートップなら、押下圧は軽いほうが打ちやすい。ところが高さがあると、多少重さがあるほうがかえって打ちやすく感じます。
RidgeCapの形状・設計思想と入手方法

RidgeCapは、アライさんが設計した17mmピッチ用の3Dプリント製キーキャップ。行ごとに傾斜がついています。
峰と鞍部が波打つキートップ
RidgeCapのキートップは、横から見ると波打つ形です。A行が谷にあたる鞍部で、Q行・Z行・Mod行が峰。
Q行とZ行には、ホームポジションへ向かう傾斜がついています。キートップの中央にも、適度な凹み。Mod行は、指を折りたたんで押すのにも、指の付け根でチョップするように押すのにも向いた高さで、指がフィットする凹みもあります。
QAZのラインの形がXVXプロファイルに似ていると知って、XVXプロファイルが好きなぼくに合うかもしれない、と手に取りました。RidgeCapは、指の第二関節の曲げ伸ばしで各行のキーにアクセスする設計です。
種類はQZ・A・Homing・Mod1・Mod2・Thumbの6種で、大きさは最長辺16.5mm四方。対応する条件は次のとおりです。
- 対応する配列 17mmピッチのカラムスタッガードかオーソリニア
- 対応しない配列 16mmピッチと、17mmのLotus配列・Grin配列
- 対応スイッチ Choc V2とMX軸
torabo-tsuki LP(XS)は17mmピッチのカラムスタッガードなので、そのまま載ります。
数mmの薄さより、数mmの傾斜を取る設計
RidgeCapを載せると、横から見て高さが出ます。ここは想定の範囲内でした。設計者のアライさんも、BOOTHの商品ページにこう書いています。
市販品も含めて、ロープロファイルキーボードはキーキャップがすべての行で平坦であることが非常に多いです。これはロープロファイルキーボードの「薄さ」を損なわないためかと思いますが、数mm薄くなることよりも数mmの傾斜によるタイピング感の改善の方が恩恵が大きいと考えています。
数mm薄くすることより、数mmの傾斜で打ちやすくすることを取った設計。ぼくもこの考えに賛成です。同じ使い勝手なら小さく軽いほうがいいものの、キーボードは使い勝手のために大きさを諦めたほうがいい典型だと思います。
ぼくにとっての使い勝手は、仕事で自分の考えを文字にする精度と速度のこと。それが上がるなら、多少の大きさは受け入れます。19mmピッチのtorabo-tsuki LP(S)を買い増した理由も、ここにあります。torabo-tsuki LP(S)が横方向に大きさを広げた実験なら、RidgeCapは縦方向の実験です。
入手と費用
今回は中古をメルカリで4000円で入手しました。
新品の場合、RidgeCap (.stl) – アライのおみせ – BOOTHでSTLデータを500円で買って3Dプリントする形です。JLC3DPなどに発注する場合はその分の費用がかかります。
射出成形で大量生産される市販品と比べると結構な値段ですが、そもそも17mm狭ピッチはニッチな世界で市販品がほぼ存在しないので致し方ないかなと思います。
RidgeCapで検証して分かったこと
以下、以前まで使っていたほぼフラットなキーキャップとの比較です。かなりはっきりと差が出ました。
打ちやすさと速度
前のキーキャップで起きていた、ホームポジションから指が迷子になることも、指の配置を指先で探る手間も、RidgeCapでは解消しました。キーの間に溝があり、キートップの中心がへこんでいます。この溝とへこみが、指先をナビゲートしてくれる形です。
速度と精度には、差が出ていません。寿司打の高級コースは5500〜6500円お得で、19mmピッチのLiNEA40やKeyball 39、torabo-tsuki LP(S)とほぼ同じ水準。スイッチは、Islet Miniに替えたあとで測っています。前のほぼフラットなキーキャップでも、torabo-tsuki LP(XS)のスコアはtorabo-tsuki LP(S)の5440円お得とほぼ同じでした(torabo-tsuki LP(S)のレビュー)。キーキャップを替えても、打鍵の速度と精度はそこまで変わらないようです。
一方で、指や腕は楽になった気がします。第二関節の曲げ伸ばしで各行に届く設計が、効いているのだと思います。XVXプロファイルを使っているときと似た感触で、心地いい。
仕事に持ち込んでも、作業は滞りなく進みました。キートップのカーブが指の曲げ伸ばしに沿っていることが、考えを文字にするスムーズさにつながっているように感じます。RidgeCap自体が一般的な市販のPBT製キートップより少し重く、厚みもあるせいか、打鍵の感触も安定しています。
前のほぼフラットなキーキャップと比べて、仕事道具としての使い心地は上がりました。
薬指と小指の窮屈さ
torabo-tsuki LP(XS)のレビューで書いた薬指と小指の摩擦感は、多少改善しました。ただし、完全には消えていません。
RidgeCapは、キートップの中心に指先が導かれる形です。薬指と小指の隙間が狭まりにくく、そのぶん窮屈さが和らぎました。仕事で使っていても、小指と薬指の摩擦はそこまで気になりません。指先を1本ずつキートップの中心へ導き、隣の指から離しておく効果が、意外と高いようです。
一方で、指の初期位置の近さは残ります。19mmと比べると、17mmでは薬指と小指の初期位置が近い。この差は、キートップの形だけでは埋められません。
打鍵音
静音軸でもキーが戻るときに鳴ることがあったカチャッという音が、RidgeCapではほぼ鳴りません。キーキャップの指に当たる面が肉厚だからか、打鍵音全体が落ち着いています。静音性が大きく上がったので、使う場面にも、ぼくの好みにもよく合います。前はKailh Purple Iris Miniとほぼフラットなキーキャップ、今回はIslet MiniとRidgeCapの組み合わせなので、スイッチの違いも含めた比較です。
例外として、スイッチではなくキーキャップの3Dプリントの品質が原因でカタッと鳴るキーがありました。こちらは針で直せます。
高さと持ち運び
前のほぼフラットなキーキャップと比べた高さの差は、1〜3mmほどです。QZ行で3mm程度、A行で1mm程度。
この差とは別に、RidgeCap自体の厚みは、いちばん低いA行で約5mmあります。
持ち運びには、いつも使っているダイソーのクッションバッグをそのまま使っています。仕事鞄に入れて3日持ち歩いても、問題はありませんでした。少し厚みは出るものの、仕事鞄の中なら気になりません。高さが出ても打鍵しやすさを取る、という設計者の意図は正しかったと感じています。
一方、親指まわりには気になる点があります。親指キーにも少し高さが出るので、19mmのPOM球をトラボにしているこの構成では、親指の可動域に制限が出ます。
3Dプリントの品質
キーによっては、押下から戻るときにキーキャップ側でカタッと鳴ります。大きな音ではないものの、静音軸を使っているのになあ、と思ってしまいました。

原因は3Dプリントの品質で、軸が刺さる穴に若干のカスが残り、ステムが奥まで差し込めていないキーで鳴っているようです。中古で買ったこのRidgeCapは、穴のなかにわずかな積層痕が見えるので、おそらく積層式で刷られたもの。
針か細いマイナスドライバーで余計なカスを削り取ると、鳴らなくなります。削りすぎると元に戻せないので、慎重に。DIYのアイテムなので、このあたりは割り切っています。
針で直したあとの音量は、オフィスで聞くノートPCのキーボードの打鍵音と同じくらい。普通の打鍵音の範囲に収まっています。
長時間の疲れ
4時間くらい打ち続けると、指の第二関節あたりが少しこわばってきます。定期的に手をグーパーしたくなる程度のこわばり。前のキーキャップとは比べていないので、RidgeCapのせいなのか、4時間打ち続けたこと自体の疲れなのかは判別できません。それ以外は、仕事現場での3日間、不自然なところなく使えています。
RidgeCapはどんな人向きか
こんな人には向いています。
- 17mmピッチの窮屈さで狭ピッチを諦めかけた人 薬指と小指の摩擦感が和らぎ、指の迷子も解消
- 薄さより打ちやすさを取れる人 行ごとの傾斜のぶん、フラットなキーキャップより背が高くなる
- 3Dプリント品の癖を自分で直せる人 カタッと鳴るキーは、軸穴のカスを針で削れば鳴らない
逆に、次のような人は無理に選ばなくていいと思います。
- 17mmの窮屈さを完全に消したい人 薬指と小指の初期位置の近さは、形では埋まらない
- ロープロファイルの薄さを最優先する人 厚みが出るうえ、19mmのPOM球のトラボだと親指の可動域に制限が出る
- 届いたまま手を入れずに使いたい人 3Dプリントのカスで、カタッと鳴るキーがある
よくある質問
- QRidgeCapはどのキーボードに載せられますか?
- A
17mmピッチのカラムスタッガードかオーソリニアの配列に対応しています。16mmピッチと、17mmのLotus配列・Grin配列は対応していません。スイッチはChoc V2とMX軸に対応しています。torabo-tsuki LP(XS)は17mmピッチのカラムスタッガードなので、そのまま載ります。
- QRidgeCapを載せると、どのくらい高くなりますか?
- A
前のほぼフラットなキーキャップと比べた高さの差は、1〜3mmほどです。QZ行で3mm程度、A行で1mm程度になります。RidgeCap自体の厚みは、いちばん低いA行で約5mmあります。仕事鞄に入れて3日持ち歩いても、問題はありませんでした。一方、親指キーにも少し高さが出るため、19mmのPOM球をトラボにしている構成では、親指の可動域に制限が出ます。
- Q寿司打のスコアは、19mmピッチのキーボードと比べてどうでしたか?
- A
寿司打の高級コースは5500〜6500円お得で、19mmピッチのLiNEA40やKeyball 39、torabo-tsuki LP(S)とほぼ同じ水準でした。前のほぼフラットなキーキャップでも、torabo-tsuki LP(XS)のスコアはtorabo-tsuki LP(S)の5440円お得とほぼ同じでした。スコアはスイッチをIslet Miniに替えたあとで測っています。速度と精度には差が出ていません。一方で、指や腕は楽になった気がします。
- Q3Dプリントのキーがカタッと鳴るときは、どう直せますか?
- A
原因は3Dプリントの品質で、軸が刺さる穴に若干のカスが残り、ステムが奥まで差し込めていないキーで鳴るようです。針か細いマイナスドライバーで余計なカスを削り取ると、鳴らなくなります。削りすぎると元に戻せないので、慎重に扱ってください。DIYのアイテムなので、このあたりは割り切っています。直したあとの音量は、オフィスのノートPCの打鍵音と同じくらいで、普通の打鍵音の範囲に収まっています。
まとめ:キートップの形しだいで、17mmピッチはぼくの射程圏内に入る
総合評価:

星は4.5。良いものですが、市販品と比べるとどうしてもコストが高くつく点と、軸穴のカスを削るような調整を自分でこなす必要がある点に抵抗がないことが条件です。
とはいえ、買ってよかったと思っています。RidgeCap自体の使い心地に加えて、17mm狭ピッチにおける自分なりの勝ちパターンというか、キートップの形しだいで17mm狭ピッチはぼくの射程圏内に入るという可能性が手に入ったのが一番の収穫ですし、好きだけど諦めかけたtorabo-tsuki LP(XS)をこれからも使い倒せるのがなにより嬉しく思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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